デザイン教育における「情報を処理すること」の本質的追求
〜デザイン情報学科「情報処理I」授業実践を通して

1.2 デザインにおける「情報を処理すること」の位置づけ


 前項より、デザインという行為に関わる様々な情報を処理する能力つまり「情報処理能力」が、多様なデザイン行為に通底するデザインの基礎能力として重要であるといえる。またその能力育成が、デザイン教育における基礎課程において特に必要であると考えるが、現在のデザイン教育においては、いまだ造形力の育成に力を注がれる場合が多く、このような情報処理能力の育成が十分に意識されたカリキュラムが組まれている例は少ない。そこで本稿では、デザイン情報学科の「情報処理I」での教育実践を例にあげ、これからのデザイン教育に資する有用な方法論を提示し、デザイン教育の基礎課程における情報処理能力育成を目指したカリキュラムの整備・体系化の必要性について考察する。

 情報処理という科目は通例、「コンピュータによる処理を対象とし、データや情報を処理するための表現や構造、それらを加工するためのアルゴリズムやプログラムなどの技法などを扱うもの(註6)」と捉えられている。しかしデザイン情報学科では、前述のようにデザイン行為における情報を処理する基礎能力育成を意図し、「情報処理」という科目をコンピュータによる処理のみを対象にするのではなく、「さらに、単体のコンピュータや人間に限らず、それらの組み合わせによる複合体をひとつのシステムとみなすことにより、その複合体におけるデータや情報の処理を考えることもできる(註7)」という観点に立ち、デザインとそれを取り巻く社会現象や意味レベル・物理レベルの環境全体をひとつのシステムとして捉え、そのシステムにおける情報の処理を考える科目と位置づけている。

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