デザイン教育における「情報を処理すること」の本質的追求
〜デザイン情報学科「情報処理I」授業実践を通して

1. はじめに
1.1 デザインを情報という視点から捉える



 デザインを取り巻く環境は刻々と変化し、デザインということばは現在多様な意味として用いられている。本学デザイン情報学科ではそのような状況において、「専門分化したデザインという行為を情報という視点から捉え直す(註1)」ことを理念に教育を実践している。

 吉田武夫は『デザイン方法論の試み(註2)』の中で、「デザインが素材から離れて用途志向の道をとったとき、取り扱う対象が情報へシフトした(註3)」と述べている。この背景には、1人がすべてのプロセスに従事していた手工芸の時代から、生産性を重視した大量生産システムに移行し、各プロセスが分業されることにより種々の職種を生んだという経緯がある。そこで、「デザインは機械に向かい実際にものをつくる仕事ではなく、何をいかにつくるかということを考える仕事(註4)」として成立し、その結果デザインは実体ではなく、書類・図面・模型などの実体を抽象化した情報を扱うようになった。

 さらに、吉田は同著の中でデザイン方法論研究者の著作をまとめ、「実物の代替物または媒体は何らかの素材(紙、木、粘土などの物質)を使って表されてはいるが、操作あるいは処理されている当のものは素材そのものではなく、情報の媒体としての言語・記号・図・絵・模型などが担っている製品やサービスやシステムに関する情報なのである。(註5)」と述べている。現在、コンピュータやネットワーク技術の発展による情報伝達メディアの飛躍的な展開を背景に、さらにその対象を広げているデザイン及びそのプロセスにおいて、操作される情報やその媒体は以前にも増して多種多様化している。

 以上から、デザインプロセスは、デザイン行為において扱う様々な情報をいかに処理するかという「情報を処理するプロセス」のひとつであるという視点を得ることができる。

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