デザインの知見を、まだあまりデザインの考え方が浸透していない分野に持ち込んでその有用性を示すこと。
「デザイン」というキーワードが、イノベーション・経営戦略・製品開発・組織マネジメントなどの経営学分野で注目されているが、この分野で扱われるデザイン概念について、デザイン学やデザイン論から考察されたものは少ない。そこで、デザイン学から経営学を照射し、経営学に有用なデザイン概念の考察を試みる。
現在「デザインマネジメント」に関して、マーケティング・製品開発・ものづくり・組織・人事・戦略立案・広報・プロモーション・CSRなどを行う現場ではさまざまな実践が行われているが、そのさまざまな実践のなかで通底する「デザインの知」を問うような体系的な研究はまだそう多くない。そこで、デザインマネジメント研究に関する知見の体系的整理を行い、そこに通底するキーコンセプトとしての「デザインの知」の有用性を明らかにする。
メディアデザインに関する議論は、技術決定論に傾倒する傾向が強く、その概念の哲学的な考察が十分ではないため、汎用的な知見が十分に社会的に共有されていない。そこで、汎メディアデザイン論としての理論構築を目指す。
教育工学をフィールドに、eラーニング、WBT、CSCLなどの知見を援用した教育・学習支援システムの開発研究が多く行われているが、その中で重要と思われるビジュアル・プロダクト・環境・情報デザイン的知見・手法は現在十全に機能しているとはいえない。よってその知見を教育・学習環境デザイン実践に生かすプロセスを研究し、より総合的な教育・学習環境の創出を目指す。
PCの一般的普及に伴い、手軽に彩色や構成など造形要素の操作が可能になり、Webページ制作や紙面レイアウトなど、これまでデザインの専門性として扱われていた行為が、一般化される場面が多くなってきた。現在このような技能育成は、「情報教育」や「メディア教育」として一般的に行われているが、単なるPCやソフトウェアの操作が中心に扱われ、そこにデザイン概念が含有されている例は少ない。
そこで、現在の情報・メディア教育において、デザイン概念が大きな役割を果たすと考える。この有用性を明らかにするために、情報・メディア教育およびデザイン概念の整理と、実践的な教育の方法化と検証を行う必要がある。これまでに、それらの概念整理と高等学校情報科における分析を行ってきた。今後さらに、科学的な実証分析データをもとに、現状のデザインやデザイン教育から導かれる知見が情報・メディア教育に有用であることの信頼性と妥当性の検証を行い、その有用性を理論的根拠のもとに明らかにすることが目標である。
デザイン行為を問題解決過程のひとつと捉え、それに関わる様々な情報を処理する能力、つまり「情報処理能力」が、今日の多様なデザイン行為に通底する基礎能力として重要であると考える。同時に、このような情報処理能力の育成は、デザイン教育における基礎課程において特に必要であると考えるが、いまだ造形力の育成に重点が置かれる場合が多く、情報処理能力の育成が十分に意識されたカリキュラムが組まれている例は少ない。よって、デザイン教育の基礎課程における情報処理能力育成を目指したカリキュラムの整備・体系化を目指し研究実践を行う。
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