デザイン教育における「情報を処理すること」の本質的追求
〜デザイン情報学科「情報処理I」授業実践を通して

2. 「information processing basics」での取り組み


  information processing basicsは、全4回で、各回1つ計4つの演習課題(exercise)から構成される。授業は最初に課題作業を進めるために必要な知識やその周辺領域の動向などを講義し、その後学生各自が演習を行う形式で進行する。

2.1 exercise 01: [hierarchical structure of information]


私たちのまわりにある情報は、そのままでは単なるデータにすぎない。これらを適切に組織化し、情報に「かたち」を与えることにより、初めて価値のある情報体系(システム)となる、ということを体感的に理解するための演習である。

 この演習課題にて学生が行う作業を以下にまとめる。

1. 授業において示されたキーワードから1つを選択して、インターネット上の検索サイトでその意味を調べる。

2. その調べた意味解説から、さらに自分が理解できないキーワード、より深く知りたいキーワードなどを3つ選択して、1.と同様に検索サイトでそれぞれの意味を調べる。

3. 3つの意味解説から、さらに1つに対し、3つのキーワードを選択し意味を調べる(合計13のキーワードを検索)。

4. 調べた意味をテキストファイルに保存し、キーワードの発生順番を辿るよう階層構造にまとめる。(図1

 情報を適切かつ効率的に利用するためには、それぞれの場合に応じたデータの扱い方や蓄積・保存方法を工夫する必要がある。この課題で学生が行う行為はまず、インターネット上の検索サイトで自分のわからない語句を調べるということである。しかし、その検索サイトの特性をあらかじめ知ったうえで語句の入力を行わないと、内容が派生していくばかりで、自分が知りたいその意味に辿りつかないということがよく起こる。自分が得たいかたちで情報を得るためには、その行為に適切な方法を選択しなければならない。今回適切な方法が選択できれば、語句の繋がりが果てしない知識の体系をかたちづくるという経験を持つことができる。次に、学生が行うのは意味を調べたそれぞれの語句をその派生順に階層構造にまとめるということである。階層構造という概念は情報の組織化としてもっとも基礎的な概念である。学生にとってはここで初出の概念のように思われ、最初日常的に様々な生活の局面において用いている概念であることに気付いている者は少なかった。しかし、作業を進めていくうちに日常生活においての経験とオーバーラップしての理解が得られたようである。

 一見これらの作業は、単なるコンピュータの操作に慣れるためのものであると安易に思われがちである。しかし、この課題演習においてコンピュータやインターネットの特性を利用して行った行為は、それらの操作方法を理解するということはもちろんであるが、それ以上に、日常生活での情報を扱う行為に対しての再認識と新たな知見を提供している。この課題の背後には、コンピュータを介して行っている私たちの行為は、人間の認識・理解の思考過程に深く関わるものである、ということの基本理解を促す目的がある。

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